2016年5月3日渋谷金王八幡宮にて「御的神事」が奉納された。これは鎌倉時代から行われて来た儀式で、弓矢の霊力で魔縁化生を祓い、国家の安泰を祈願するというもの。わたしも澁谷流奉崇会の一員として、この半年ほど準備に携わってきた行事だ。 当日は朝早くから屋外では的の設営、屋内では精進の儀の準備を行った。
精進の儀は、精進料理とともに盃ごとを行い、日常から儀式への転換を行うためのもの。わたしはこの精進の儀の担当。精進料理はなんでもよいらしいが、この日は武士の日常食である「湯漬け」を出すことになった。
ご飯にお湯をかけ、梅干しや昆布、漬物などとともにいただくのが、湯漬け。 せっかく古式ゆかしい儀式を行うのだから、それにふさわしい、添加物など入っていないおかずを準備しようとしたが、無添加の塩昆布はどこを探しても見当たらず、結局自分でつくることになった。つくってみたら、シンプルな材料なのにおいしくてびっくり(と自画自賛)。梅干しも、去年自分で塩だけで漬けたもの。野沢菜とたくあんも添えて、彩りも美しくなった。
祝詞の奏上、玉串奉奠が終わると、次は「引目(ひきめ)」。これは局所的な魔除けとして行う儀式だそうだ。
矢を止めるための道具も澁谷会長指示のもと不十分ながら会員たちが手縫いしたもの。 澁谷会長によるとこうして手間をかけることそのものが神様に対する奉仕となり、精一杯努力して、心を込めて手間をかけることが大事。結果ではなく、過程が大事だそうだ。そういう考え方は日本的な精神文化の特質だと思う。
「引目(ひきめ)」についで、「大的(おおまと)」を執り行う。
役人が「当たり」などを朗々と奏上する。
一連の儀式が終わったら、直会(なおらい)となる。
オーストリア大使にもご参加いただいた。
菊乃井のお弁当は品のよいお味。
そして、お客様がお帰りになった後は会員だけの反省会。
これは菖蒲の根を日本酒に漬けた菖蒲酒。菖蒲の香りが芳しく、ほんのりとしたピンク色も美しい。本当はお客様にも召し上がっていただきたかったのだが、訳あって会員だけで飲むことになった。
わたしはこの菖蒲酒も担当。菖蒲の根っこをきれいに洗うのが意外に手間だったが、初めての経験が興味深かった。
精進の儀と菖蒲酒を担当した3人組。
会員のみなさん、見に来てくださった方々に感謝。
なにはともあれ、無事に奉納することができて何より。
500年ぶりに復活したこの儀式によって、日本国に立ち込める暗雲が少しでも晴れることを期待したい。