吉田松陰の「士気七則」―日本人の美徳を再確認

今日乃木神社の宝物館でもらってきたのが、吉田松陰作「士気七則」の原文(漢文)、読み下し文、現代語訳が掲載された資料だ。

乃木希典は若き頃、師である叔父玉木文之進より松陰直筆の「士気七則」を贈られて、肌身離さず持ち歩いていたという。後に西南の役の激戦中に紛失して非常に残念がり、そののちは木版刷りの「士気七則」を、明治天皇よりの「軍人勅諭」とともに大切にしていたそうだ。

とてもよいので、とりあえず現代語訳だけここに紹介したい。

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士規七則

書物にあふれる偉大な言葉は、人の気持ちを奮い立たせる力がある。しかし、今の人々は書を読まず、読んでも実行しない。

もしもきちんと読んで実行したならば、千万世といえども受け継ぐに足る偉大な教えがある。ああ、何をか言うべきか。

そうは言っても、良き教えを知れば、どうしても伝えたくなるのが人情である。だから古人はこれを古に述べ、私は今これを述べる、また何を憂えることがあろうか。ここに「士規七則」を作る。

一つ、およそ、人として生まれたならば、人が鳥や獣と違う理由を知らなければならない。思うに、人には、人として守るべき五つの道理があり、そのなかでも君臣と父子の関係が最も重要である。ゆえに、人が人であるための基本は忠と孝である。

一つ、日本に生まれたのであれば、まず日本の偉大なるところを知るべきである。日本は万世(万葉)一統の国であり、地位ある者たちは歴代にわたって責任ある禄位を世襲し、人君は民を養いて先祖伝来の功業を継ぎ、臣民は君に忠義を尽くして祖先の志を継いできた。君臣が一体であり、忠孝を一致して実行しているのは、ただわが国においてのみである。

一つ、士の道において、義より大事なものはない。その義は勇によって行われるものであり、勇は義によって育つのである。

一つ、士の行いは質朴実直にして、人を欺かないことが最重要で、巧みに人をだまし、偽ることを恥とする。人として光明正大がいかに大事であるかは、皆これを原点としている。

一つ、人として生きながら、古今の真実に通ぜず、聖賢を師として学ばなければ、くだらぬ人物となってしまう。だから読書して古人を友とするのは君子の大事なつとめである。

一つ、死してのちに已むの四字(死而後已)は、言葉上は簡単であるが、意味するものは遠大である。堅忍果決で、何事にも動ぜざる者になるためには、この言葉を置いて他にない。

この士気七則を要約すれば三点である。すなわち、志を立てて万事の原点とし、友を選んで仁義の行を助け、読書によって聖人の訓を学ぶ。士たる者、もしもここに得ることが有れば、また人と成るに足るであろう。

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「人を欺かないことが最重要で、巧みに人をだまし、偽ることを恥とする」というのには強く共感する。それにひきかえ、現代の日本にはびこる人を「はめる」かのような商売のやり方はどうだ。現代の携帯電話会社などによくある「最初の1か月は解除できない契約」などは、解除し忘れて消費者のお金が自動的に引き落とされ続けることを期待しているものであり、「だます」まではいかないが、明らかに消費者を「はめる」ことを狙っている。それに類する契約をさせられるたびに、わたしはその姑息なたくらみに辟易する。

日本人が持っていた美徳を再確認させてくれる士気七則。多くの人に読んでほしい。

 

 

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